マジックスピーチとは?

Who? 観客別マジックスピーチの効果

 「マジックスピーチ」をはじめたけれど、

「観客によってどんなマジックを演じ、どんな演出をすれば効果的なのかわからない」

という初心者さんの悩みに応えます。そうですよね、スピーチに限らず、スポーツでもお笑いやコンサートでも、相手の特徴を洗い出して弱点を研究をしたり、ウケそうなネタを用意するなど、対戦相手や観客の対策を立てます。それが結果に直結することはざらにあります。

 当然、マジックスピーチも同じです。観客に応じた対策を立てるほど「マジックスピーチ」の効果が発揮されます

マジックスピーチの成果を発揮するためには『観客にあったセレクト』を考えること

 スピーチといっても会場に来る観客は、スピーチの内容やニーズによって、年齢も職業も、性別もまちまちです。しかし、そのスピーチを聞きにくる人の中心となる客層は予想がつくものです。子育てに関するスピーチなら30~40歳代の主婦が中心になります。

 また、ビジネスに関するスピーチであれば30代以降の男性が、老人ホーム等でのスピーチではおじいちゃんおばあちゃんが、学校の先生方であれば子ども(生徒)達がターゲットとなります。

 同じマジックを演じても男性と女性では反応が大きく違います。子ども達はすぐに食いついても、中年男性はなかなか食いついてくれません。若い人にはわかってもお年寄りにはわからないこと、その逆も当然あります。そうであれば、そこにいる観客の心にささりやすいマジックや演出の方が効果的なスピーチとなるのは当然でしょう。

『観客にあったセレクト』を考えなかったための失敗

 マジックスピーチをはじめたばかりの頃、こんな失敗をしたことがあります。当時、教職員組合の役員をしていた私は、50人くらいの組合員の皆さんの前で、組合の活動について知ってもらうためのオルグ(指導的な話)をしました。役員以外で参加していた方は、動員で集められた方々ばかりです。勤務が終わって疲れている中、参加者のほとんどが早く返りたいと思っている人です。

 そんな集会のある活動について説明する場面でマジックスピーチをしました。伝えたいことに関連ずるマジックをセレクトし、それにつなげていく流れを意識してスピーチを構成したつもりでした。スピーチ自体は、ある程度の笑顔や歓声もあるまあまあのものだと感じていました。

 ただ、マジックスピーチを取り入れるよりも7分くらい長い話になっていました。集会全体が終わって参加者が帰るとき、「全く長いよね。とにかく早く返りたかったのにね!」「別に手品見に来たんじゃないのにね」という声が聞こえてきたのです。これは、私にわざと聞こえるような声でした。

 私は、とにかく観客の興味を引くため、自分の都合しか考えていませんでした。その集会に参加している観客のモチベーションや心の余裕のことなんかまったく気にしていなかったのです。今日の観客は、動員によって仕方なく参加するだろうという事情を全く考えずに長い話をしてしまったのです。心を閉ざした人たちに私の話は届かなかったのは当然のことだと思います。

『観客にあったセレクト』をする重要性

 スピーチに参加する理由は、それぞれまちまちです。会社や学校などでの朝礼や集会のように仕方なく参加する場合もあれば「〇〇さん講演会」や「結婚式」のように自ら望んで参加する場合もあります。

 幼児園や学校、老人ホームのように一様な年齢構成の集団もあれば、会社などのように様々な年齢構成の集団もあります。さらには、職場や学校の自己紹介や赴任の挨拶など自分を印象づけたり知ってもらうためだったり、結婚式のスピーチのように自分以外の人物を紹介するようなケースもあります。

 つまり、人は、それぞれの事情や状況を抱えスピーチ会場に来ているのです。まさに孫子のいう彼を知り己を知れば百戦殆うからずです。自分の武器であるマジックスピーチの効果を発揮するためには、相手の状況や特徴を理解することから始めなければならないのです。

観客のニーズを考える

 観客にあったセレクトを考えるうえで一番大事なのは、観客のニーズを考えるということだと考えています。会場に来られている観客の皆さんは、何を求めてここに足を運んでくれたのか。スピーチがこの観客のニーズを満たしたとき、観客は満足して帰途につくことができるのだと思います。

 私は、スピーチするとき、ニーズを満たすための最善のマジックの選択 ニーズを満たすための最善の演出 の2つを考えます。

 例えば、「進路に迷う自分の子どもへの接し方を聞きたい」という母親向けのスピーチの場合、①のマジックの選択では、進路選択に迷う子どもの心を色が変わるハンカチや指先に現れては消える光や、空中で揺れ動くボールで表現しました。

 ②の演出では、実際に家庭でありがちなストーリーをマジックを利用して演じます。急にイライラしたり、反抗してくる様子をマジックで表現します。

 こうして、実体験とマジックスピーチを重ね合わせることによってお母さん方の心に共感が芽生えます。観客のニーズを満たし、共感を得られればそのスピーチは成功と考えて良いでしょう。

会場の客層を考える

 次に考えるのは客層です。お母さん方に話すのか、お父さん方に話すのか、または先生方に話すのか、地域の方々に話すのか。一般の会社では、社員に話すのか、お客さんに話すのか、関連企業の方々に話すのかによって変わってくるでしょう。そのスピーチのメインとなる観客をターゲットにする必要があります。

 客層が変われば、同じ話し方や同じマジックをしても、反応は大きく変わります。お母さん方はよく笑い、歓声も上げてくれますが、お父さん方の心はなかなかゆるんでくれません。最後まで恐い顔をしている方も一定数います。ですが、少し演出を工夫して、ボクシングのジャブを細かく出すように少しずつマジックをだしていくと、心を開いてくれる様子がわかります。人にもよりますが、マジックの呪文をかけてもらったり、その方の近くに行って演技するなどすると効果があります。

 老人ホームに訪問した際には、ゆっくりと話すことを心がけます。そして、より華やかでより現象がはっきりとしたマジックをセレクトします。

 子ども達の集まりでは、反応が良すぎて規律を保てなくなることもあります。中には、突然、前に来てタネを探し始める子どもも現れます。そういう場合は、スピーチの前にルール守ることの必要性をおもしろおかしく話すこともあります。

スピーチの時と場合を考える

 最後は時と場を考える重要性についてです。例えば、自己紹介や結婚式の友人代表や忘年会などの挨拶などのように、多少、ユニークな内容が許される非公式な場面ではマジックスピーチは効果的です。

 そういう場面では、最初から観客の心は開いています。どんな話をしてくれるのだろうかという期待感をもって参加しています。期待通りまたは、期待以上の(マジック)スピーチを見せられた観客はもう、大喜びです。初心者の方には、まずこういう場面でのマジックスピーチをお勧めします。

 反対に、公式な場、例えるなら企業のプレゼンや会社の訓示、学校の朝礼や集会などは、必ずこれを伝えなければならないというメッセージがあります。ですから、厳粛な雰囲気が漂っています。しかし、意外に思うかもしれませんが、この雰囲気がマジックスピーチには相性がいいのです。まさにお笑いの「緊張と緩和」を生かす大チャンスなのです。

 厳粛な雰囲気の中で突然、緩和となる「マジックの現象」が現れると、観客の心は一気に緩み、こちらに心を開いてくれます。こういう場面こそ、マジックスピーチの最大の魅力と言っても過言ではありません。

観客に対する知名度の違い

 観客が自分を知っている場合と知らない場合でも注意すべき点は大きく変わります。スポーツでのホームとアウェイの違いのようなものです。当然、ホームの方がやりやすいのは言うまでもありません。

 始まる前から観客の心が開いた状態でスピーチを始めることができます。スピーチ前から「今日はどんなことをするのか?」と期待感をもって参加してくれています。ただし、気をつけなければならないのは、なれ合いになりやすく、やり過ぎる傾向があるという点です。

 笑ってくれたり、歓声がおこるとうれしいものです。つい、調子に乗りすぎて伝えるべきメッセージをかすませてしまう危険性があることを肝に銘じておく必要があります。

 逆に、観客が自分を知らない場合は、『序論』でのつかみの部分で「この人はこうやって話をする人なんだ!」「そうか!この人の話はリラックスして聞ける話なんだ」と理解してもらうことを意識しなければなりません。こうして、スピーチのはじめに観客の心を開いてもらう工夫ができれば、後は、ホームゲームとしてスピーチを進めることができるのです。

まとめ

 今回は、マジックをスピーチに取り入れる際の「観客にあったセレクト」の重要性について再度、まとめてみました。

  1. 観客の『ニーズ』
  2. 会場の『客層』
  3. スピーチの『時と場』
  • この記事を書いた人

なんでやねんゴロー

 教師歴37年。マジック歴23年。
多くのイベントや各種施設で『ステージマジック』を中心に演じてきました。はじめは,お客様が驚き楽しんでくれることが喜びだったのですが,徐々にお客様から『やる気』や『感動』をもらっている自分に気づいてきたのです。
「『マジック』というこんな素晴らしいツールをスピーチに取り入れてみたらどうなるのだろうか?」という素朴な疑問からスタートしたマジックスピーチ。その絶大なる効果と成果に私自身が一番驚いています。

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